再燃するFRAND係争(エリクソンvsアップル)

 エリクソンとアップルの間で係争が再燃しています。両社は2015年に、当時締結していたライセンス契約の更改時に標準必須特許(SEP)のロイヤルティレートで揉め、およそ一年に渡る訴訟合戦の末、最終的に和解を行い、クロスライセンス契約を締結しました。

 この契約ではアップルからエリクソンに対するロイヤルティ支払いが定められていましたが、2021年末の契約満了までに更改後のロイヤルティレートの条件が合意できなかったために、再び法廷の場での争いが勃発しています。

 まず2021年10月4日にエリクソンがテキサス州東部地区地方裁判所に確認訴訟(Case 2:21-cv-376-JRG)を提起しています(*1)。

 確認を求めている内容はエリクソンは標準必須特許を公正、妥当かつ非差別的(FRAND)な条件でライセンス供与するという FRAND義務を遵守していることです。ここで特許権侵害訴訟ではなく確認訴訟を求めたのはその時点まだアップルとのライセンス契約が有効であったためです。契約期間が残っている段階で訴訟という手段に打って出ています。

 アップルはこれに対して同年12月17日に同裁判所に対して同じく確認訴訟(Case 2:21-cv-460)を提起しました(*2)。

 アップルが求めた確認内容はエリクソンが(i)当事者間の現行の合意に違反したこと、および(ii)新たなライセンスに対してFRAND条件を提示するというFRAND義務に違反したということです。

 その後、ライセンスが切れた年明けの2022年1月17日にエリクソンはテキサス州西部地区地方裁判所に対して侵害訴訟を複数 (Case 6:22-cv-60,Case 6:22-cv-61) 提起すると共に、米国国際貿易委員会(USITC)に対して侵害調査申立てを複数(No. 337-TA-3595,No. 337-TA-3596,No. 337-TA-3597)行っています(*3,4,5,6)。

 これらの訴訟/申立ての中で、エリクソンは4件の標準必須特許(SEP)( US8,102,805US9,532,355US10,425,817US11,139,872 )ともに、8件の非標準必須特許(Non-SEP)( US7,151,430US7,957,770US8,472,999US8,792,454US9,509,273US9,705,400US9,853,621US10,880,794 )を使用しています。

 アップルはこれに対して2021年1月19日に、3件の特許(Non-SEP)(US9,882,282US10,263,340US9,667,290)を用いてUSITCに対してエリクソン製品によるアップル特許の侵害調査申し立て(no. 337-TA-3599)を行っています(*7)。

【参考情報】FOSS PATENTS